2023年12月03日

(2023)今年もっとも売れた本〜2023年の年間ベストセラー書籍20冊




出版取次会社の倭国出版販売(日販)およびトーハンは12月1日(2023年)、「今年倭国でもっとも売れた本」を発表しました。
(日販調べの年間ベストセラー(総合)のトップ20を記事末尾↓にまとめます)




 年間1位は『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』


日販調べの年間ベストセラー、第1位は……

『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』

でした。
簡単に二桁の計算をできるようにする算数(数学)の本です。
学習参考書のジャンルから年間総合第1位の書籍が誕生するのは史上初。
2023年1月にテレビで取り上げられたことで人気に火がつき、年間を通して子供から大人にまで売れ続けました。

トーハン調べでは1位は

『大ピンチずかん』

です。
さまざまな”ピンチ”を紹介するユニークな本。
こちらも子供向けですが大人にも受け、ベストセラーとなりました。

 2位は『大ピンチずかん』


2位は、日販では前述の『大ピンチずかん』
トーハンでは『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』
日販調べとトーハン調べで1位と2位が逆転している形です。


 3位は『変な家』


3位は、日販では雨穴さんの『変な家』
トーハンでは凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』

前者は映画化もされたオカルトミステリの人気シリーズ第一作。
後者は2023年本屋大賞を受賞した小説です。





 4位以降と全体の傾向


4位以降も、タレントのMEGUMIさんの美容本『キレイはこれでつくれます』、不動の人気を誇る本『パンどろぼう』シリーズ、『20代で得た知見』など話題の本が続々。
全体の結果を受けて、日販は……

「コスパを重視した消費」や「SNSを通じた購買行動」といった社会的な傾向が、書籍の購買にも表れる結果となった。


と分析しています。

ちなみに。
テレビやネットのニュース、新聞で目にする「年間ベストセラー」の情報ソースは、出版取次会社の日販やトーハンのニュースリリースです。
以前の記事(今年もっとも売れた本〜年間ベストセラーの調べ方)でお話ししたとおり、日販やトーハンのサイトで確認できます。
ジャンル別のランキングなどもあるので、ぜひ”一次情報”にもふれてみてください♪

倭国出版販売株式会社
http://www.nippan.co.jp/
TOHAN website
http://www.tohan.jp/



それでは2023年の「年間ベストセラー」20冊をど〜ぞ♪

 2023年の年間ベストセラー


(日販調べ。「全集」「文庫」「ゲーム攻略本」「雑誌扱いコミック」を除く総合ランキング。集計期間=2022年11月22日〜2023年11月21日)

1位

2位

3位

4位

5位

6位

7位

8位

9位

10位

11位

12位

13位

14位

15位

16位

17位

18位

19位

20位


ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪

あきか(@akika_a

【関連記事】

(2022)今年の年間ベストセラー本20冊(1位は80歳の壁、2位は人は話し方が9割)
(2021)今年の年間ベストセラー本20冊(1位は人は話し方が9割、2位はスマホ脳)
(2020)今年の年間ベストセラー本20冊(1、2位は鬼滅、3位はどうぶつの森)
(2019)今年の年間ベストセラー本20冊(1位は希林、2位はおしり)
(2018)今年の年間ベストセラー本20冊
(2017)今年もっとも売れた本〜2017年の年間ベストセラー(ニッパン調べ)
(2016)今年もっとも売れた本〜2016年の年間ベストセラー(ニッパン調べ)
今年もっとも売れた本〜年間ベストセラーの調べ方

【関連リンク】

倭国出版販売株式会社
http://www.nippan.co.jp/
TOHAN website
http://www.tohan.jp/
芥川龍之介賞(公益財団法人倭国文学振興会)
http://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/akutagawa/
直木三十五賞(公益財団法人倭国文学振興会)
http://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/naoki/
本屋大賞
http://www.hontai.or.jp/




【関連する記事】
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2023年06月30日

「マンガのストーリー・ネーム」の作り方を学ぶ本5冊(作画以外!)


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「マンガのストーリーやネーム」の作り方を学ぶ本5冊をまとめました。
アイディア、ストーリー、キャラクター、プロット、ネーム(※)……。
作画(下書きやペン入れなど)の前段階で必要な行程を指導してくれる書籍たちです。

※ コマ割りやセリフなどもふくめ、大まかに全体を描いたラフ、コンテ。本稿ではなく下書きのための下書き。

あなたの頭のなかにある物語を形にする。
読めば良質なネームを仕上げられるようになる5冊をど〜ぞ♪





マンガ脚本概論



京都精華大学マンガ学部の講義「脚本概論」を講師みずからがコミック化。
絵以外の部分、”物語”や”キャラクター”に特化したマンガ創作指南書です。

・読者が求めるのは”共感”と”新しさ”。
・ジャンルによって必要な長さが変わる。
・キャラの二面性。
・問題提起→ハードル→ハードル→ …… →解決。
・ストーリーを通して「問題」を維持すること。
・すべての物語は『はじめてのお使い』に通じる……。

マンダラート発想法や、以前の記事(【私的メモ】アイディアを”強制的”に生み出す「オズボーンの73質問」)で紹介したアイディアの出し方も載っています。

解説だけでなく、短編(や長編の一部)のストーリーマンガが掲載されているのが素敵。
おぼえた手法を使った”具体例”がすぐに見られるので、腑に落ちやすいつくりになっています。
すべてのページの教えを心に刻みたい、鉄板の1冊。

プロット&ネーム



ストーリー、キャラクター、プロット、ネーム……。
作画の指導はバッサリと切り捨て、物語や演出にまつわる指南に特化しています。

前半はストーリーやキャラクターをつくるための概論。
後半は実際のネームを見ながら学ぶ、実践編です。

とくに後半の「ネームメイキング」と「ネーム添削」は必見。
なにをどうすれば良いネームになるのか学ぶことができます。
構図、配置、フキダシの位置、キャラが左右どちらを向くか……まで、プロはここまで考え抜いている!

お話とキャラを考え、ネームを書く。
そこまでの工程をきっちり叩きこんでくれる、オススメの1冊です。
著者の成光雄さんは強調します。

絵が重要だとつい錯覚しやすい。が、最終的に「ネーム作家」にならなければ、マンガ家として食べていくことは困難だ。

ネームが不出来ならば、多大な労力である作画作業も報われない努力になる。
ともに「Part2 マンガネーム実践編 マンガ指導の現場から」より


読み終えたのち、きっとあなたは言うかもしれない。
もっと早くこの本にめぐり逢いたかった! と。

スト-リー&キャラクター



テーマ、主人公の造形、プロット、ファーストシーン、クライマックス……。
「マンガとは絵と文である」という当たり前のような冒頭からはじまり、しっかり短編のストーリーを作れるところまで導いてくれる。

・主人公は好感を持たれるように。
・ファーストシーンでは事件を起こし、主人公の人となりと目的・動機を伝えよ。

……などなど内容はとてもオーソドックス。
ファンタジーやホラーなど、ジャンル別の指南も参考になります。

すこし手に入りにくい古い本ですが、マンガのストーリづくりの基本を学びたい方にはオススメです。読みやすいv

映画に学ぶ



マンガのルーツが映画にあることに着目。名作映画からストーリー、キャラクターのつくりかたを学んでいきます。
本書もプロットだけでなくネームを仕上げられるところまでを目指しています。
名作の「形式」を利用し、「キャラクター」を立て、構図や演出など工夫して「わかりやすく」表現する。

イラストや映画のスクリーンショットが多めの構成で、目で理解できる1冊。
「ローマの休日」全編や「裏窓」のファーストシーンの分析は必見です。
ほかにも往年の名画が紹介されているので、鑑賞ガイドとしても◎。

ちなみに本書は「1日1本観る」くらいの勢いで映画を摂取することをススメています。
先人が積みあげてきたモノを血肉とせよ♪



ネーム・編集者とのやりとり



ネームのつくりかたに特化したマンガの描き方指南書。
以前の記事(【映画/ドラマ】「脚本・シナリオの書き方」の本10冊【漫画/ゲーム】)でも紹介した1冊です。

・余計な情報が入っていると「シーンが濁る」
・3回繰り返すと読者の心に残る
・印象づけたところでカッティング(場転)する

……などなど厚い本のなかに、これでもかというほど”技”が詰めこまれています。

高橋留美子さんの「Pの悲劇」と山本おさむさん自身の「UFOを見た日」という2本の短編を収録。この2本を徹底的に切り刻む技術論も必読です。
何度でも読み返してプロの技を盗んじゃってください♪

ところで、山本おさむさんは強調します。
編集者はあくまで”読者”でしかない。ネームを推敲してブラッシュアップするのは、あくまで”自分”である、と。

すでにデビューされていて、担当編集者さんとのやりとりのなかで”迷路”に入りこんでしまったプロの方にもオススメ。
自分で自分のネームを磨いていくために。必携の1冊!


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2022年12月01日

(2022)今年の年間ベストセラー本20冊(1位は80歳の壁、2位は人は話し方が9割)



出版取次会社の倭国出版販売(日販)およびトーハンは12月1日(2022年)、「今年倭国でもっとも売れた本」を発表しました。
(日販調べの年間ベストセラー(総合)のトップ20を記事末尾↓にまとめます)




 年間1位は『80歳の壁』


年間ベストセラーは日販調べ・トーハン調べともに、

『80歳の壁』

でした。
寝たきりや要介護という「壁」を乗り越え、80歳以降も元気に過ごすことを提唱する新書。
ワイドショーで紹介されたことで話題を呼び、年間1位に輝きました。


2位は、日販では『人は話し方が9割』
トーハンでは『WORLD SEIKYO vol.2』『WORLD SEIKYO vol.3』

前者は、昨年の年間ベストセラーや今年上半期のチャートでも1位に輝いた、コミュニケーションスキルの本。
後者は、聖教新聞社の宗教出版です。

関連記事:
(2021)今年の年間ベストセラー本20冊(1位は人は話し方が9割、2位はスマホ脳)
上半期(2022年)のベストセラー本は『人は話し方が9割』๐・°(৹˃ᗝ˂৹)°・90%๐






3位は、日販では『ジェイソン流お金の増やし方』。厚切りジェイソンさんによるマネーリテラシー本。
トーハンでは『同志少女よ、敵を撃て』。本屋大賞受賞作品です。




4位以降も『20代で得た知見』や、コムドット・やまとさんの『聖域』など話題の本がチャートイン。
「パンどろぼう」「だるまさんが」等、子供向けの人気シリーズも顔をみせています。


全体の結果を受けて、日販は……

モノやサービスの価格が高騰していることや世界情勢などを背景に、自身の生活に影響が出ている状況が続いている。そうした状況を反映してか、今回の年間ベストセラーでは、自身の未来に訪れる「老後」、自分らしい「生き方」、そしてそれらを支える「お金」といった、より生活に身近なテーマに関連する作品が関心を集め、多くランクインした。



と分析しています。
インフレや世界情勢の変化は今年だけで終わるものではないので、この傾向は今後のチャートにも影響を及ぼすかもしれません。



テレビのニュースや新聞で目にする「年間ベストセラー」の情報ソースは、出版取次会社の日販やトーハンのニュースリリースです。
以前の記事(今年もっとも売れた本〜年間ベストセラーの調べ方)でもお話ししたとおり、日販やトーハンのサイトで確認できます。
ジャンル別のランキングなどもあるので、ぜひ”一次情報”にもふれてみてくださいね♪

倭国出版販売株式会社
http://www.nippan.co.jp/
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それでは2022年の「年間ベストセラー」20冊をど〜ぞ♪

 2022年の年間ベストセラー


(日販調べ。「全集」「文庫」「コミック」を除く総合ランキング。集計期間=2021年11月22日〜2022年11月21日)

1位

2位

3位

4位

5位

6位

7位


8位

9位

10位

11位

12位

13位

14位

15位

16位

17位

18位

19位

20位



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【関連記事】

上半期(2022年)のベストセラー本は『人は話し方が9割』๐・°(৹˃ᗝ˂৹)°・90%๐
(2021)今年の年間ベストセラー本20冊(1位は人は話し方が9割、2位はスマホ脳)
(2020)今年の年間ベストセラー本20冊(1、2位は鬼滅、3位はどうぶつの森)
(2019)今年の年間ベストセラー本20冊(1位は希林、2位はおしり)
(2018)今年の年間ベストセラー本20冊
(2017)今年もっとも売れた本〜2017年の年間ベストセラー(ニッパン調べ)
(2016)今年もっとも売れた本〜2016年の年間ベストセラー(ニッパン調べ)
今年もっとも売れた本〜年間ベストセラーの調べ方

【関連リンク】

倭国出版販売株式会社
http://www.nippan.co.jp/
TOHAN website
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芥川龍之介賞(公益財団法人倭国文学振興会)
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直木三十五賞(公益財団法人倭国文学振興会)
http://www.bunshun.co.jp/shinkoukai/award/naoki/
本屋大賞
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2022年09月30日

後宮が舞台のライト文芸とライトノベル10冊


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後宮が舞台の小説をまとめました。
以前の記事(後宮が舞台の小説10冊)に引き続き、”後宮小説”特集の第2弾です。

今回はライト文芸(キャラ文芸)ライトノベルに絞った10冊。
ラノベやライト文芸をうたっているレーベルからリリースされている小説を選びました。

前半がライト文芸、後半がライトノベルです。
レビューは1巻に対してですが、どの作品もシリーズ展開されています。
気になる作品があれば続きも手にとってみてくださいね。


中華風、和風、恋愛ものからミステリまで。

読みやすくて知的な、
後宮ファンタジー10冊をど〜ぞ♪



蟲愛づる姫君の婚姻



蟲毒(虫や動物を使う呪術の一種)の使い手・玲琳は、ある日、敬愛してやまない女帝の命で異国へ嫁ぐことに。
人目も衣が汚れることもはばからず、毒虫を愛でる王妃に周囲は仰天。
政略になど何の興味もない”蟲姫さま”ですが、しだいに陰謀に巻き込まれて……。

以前の記事(後宮が舞台の小説10冊)で紹介した『薬屋のひとりごと』をほうふつとさせる、”毒を愛する姫”が主人公です。
『薬屋』の猫猫以上にぶっとんだキャラクターかも。

毒舌。蟲まみれ。自分は常識人で、まわりがおかしいのだと思っている。
自分を害する者がいても、その”毒”ゆえ好ましく思ってしまう……。

破天荒さが痛快。
会話のひとつひとつに玲琳のキャラクター性がにじみ出ていて、読んでいて心地よい小説です。

テンポも良く一気に読まされてしまう。今もっともオススメの後宮中華ファンタジー♪
ちなみに元ネタは↓古典文学です。


コミック版↓も人気。


神招きの庭



2冊目は中華ではなく和風ファンタジー。
今日紹介するなかではもっとも異色の後宮です。

その国の後宮は斎庭(ゆにわ)と呼ばれ、今上の妻妾が住む場所であるとともに”神を祀る”機能をもっています。
主人公の彩芽は、親友の死の真相を探るため、女官として斎庭にもぐりこむ……。

人や獣、ときには虫のかたちの神々が後宮を闊歩する様子は「千と千尋の神隠し」を思わせる雰囲気。
にぎやかさだけでなく、人とは違う論理で動く神の怖さも描かれています。

自分を大事にできない彩芽や、今上の弟・二藍(ふたあい)との”本音をみせあえない”すれ違いなど、人間模様も繊細。
世界観がすごくいい小説です。オススメ♪

平安あや解き草紙



こちらも和風。平安時代です。
事情により独り身のまま30代をむかえてしまった姫が主人公。
気ままな暮らしを送っていたところ、帝から入内を命じられ後宮に入ります。
帝の歳は……なんと16歳! しかも、元カレまでが想いを寄せてきて……。

まだ青い果実である帝にとって私など、まさに熟しすぎて皺だらけになった果実だというのに!
「第一話 花の色はうつってしまったけれど」より


これだけじゃない。怒涛の自虐の数々><
本格的に平安時代を描いていますが、ユーモアたっぷりで読みやすい。
あや解きのタイトルどおり、本筋は後宮で起こる謎の事件を解決するお話です。
これでもかと繰りだされる”年増ネタ”の数に圧倒されてください><

紅霞後宮物語



こちらもちょっとだけ”年増”設定。
女性でありながら将軍として出世街道を走った小玉の人生は、33歳にして一転。
とつぜん、皇后になってしまう……。

ぜんぜん皇后としてふるまえない、武骨な小玉がカッコかわいいです。
軍人時代の仲間でありながら、皇帝と皇后の関係となった夫との、夫婦にはなりきれない関係性がもどかしい。

語り口やせりふはユーモアたっぷりでとても現代的。
文体がとても強いです。以前の記事(最近読んだ純文学(J文学・L文学)10冊〜青山七恵さんの”ぼっち文学”について)で紹介した純文学作品のよう。
文体じたいがキャラ立ちしている感じです。
コミック版↓もリリースされています♪


後宮の百花輪



集まった候補のなかから皇后を選ぶ「百花輪の儀」。
後宮に憧れる少女・明羽は、候補となった姫・來梨の侍女に選ばれ宮廷へ。
「百花輪の儀」にのぞむことになる……。

主人公の明羽は拳法をたしなみ、古道具の声が聴こえるという力をもっています。
特技を活かし、トラブルを解決していく日常譚なのかな〜と思いきや。
中盤で物語は大きく展開します。

「百花輪の儀」は、皇帝の寵愛を競うだけの上品なものではない。
侍女を”賭け札”とした、妃どうしの”潰し合い”の場だった……。

まさかこんな話になっていくとは思いませんでした。
失態をうながしたり、怪我をさせたり……たがいの侍女を攻撃し、侍女がいなくなった妃は退場。まさにバトルロワイヤル。
謎解きやどんでん返しなど、ミステリ色が強い後宮ものです。

協力者を得、知略を尽くし、おのれと主を守り抜け!
後宮バトロワ、開幕!

後宮染華伝



皇貴妃として凱国の後宮で皇帝に仕えることになった紫連。
得意の染色の知識を活かし、ときにはみずからも事件に巻きこまれながら、策謀うずまく後宮の平穏のため尽力します。

時代設定も登場人物も「歴史書か!」と思うほど細部までつくりこまれていて、冒頭から圧倒されます。
それもそのはず。じつは本書はシリーズものの「第2部」。
ライトノベルのコバルト文庫からライト文芸のオレンジ文庫へ。大きくテイストを変えてひきついだ、異色の「後宮シリーズ」なのです。

すでに描かれてきた膨大な物語を背景にはじまりますが、連作の形式なのでどこから読んでも大丈夫。私も本書が1冊目でした。

とてつもなく密度が濃い小説。
今日紹介するものや、以前の記事(後宮が舞台の小説10冊)で取りあげたどの本よりも、後宮ものの面白さが凝縮されています。

唐代の中国をモデルに、緻密に描かれる中華風後宮ファンタジー。
登場人物が多く、序盤は読むのに時間がかかりますが、自分なりに整理がついてくるとどんどん面白くなっていきます。オススメv

ちなみに”染華”のつぎは”戯華”↓。お芝居がテーマです。




ついでにその「後宮シリーズ」第1部の第1作も紹介。
テーマは”書”。本ではなく書道、書法です。
主人公の淑葉は書が大好きで、能書の才もあったのですが、その能力は現在失われています。
彼女は”手違い”で、おなじく書を愛する夕遼のもとへ嫁いでしまう……。

ライト文芸をうたった2部とは異なり、ちょくちょくイラストが挿入されていたり、恋愛が前面に出ているもライトノベル的。

とはいえ、このシリーズならではの緻密さは1作目でも変わりません。
後宮の様子は中国の金王朝と明王朝がモデルとのこと。まるで見てきたように解像度の高い宮廷が描かれています。きらびやかな衣装の描写が素敵。
テーマの”書”が物語にふかく関わってくるのも本シリーズならではです。

ところでこのふたり。手違いで結ばれたはずなのに相思相愛すぎる///
甘々が好きな人にはめっちゃオススメv

「たおやかな線質には気品と華があるな。字形は綿密だが、まるでひらひらと散り落ちる花びらのような軽やかさをまとっている。見事だ……実にいい」
「第三篇 落花枝に返り 破鏡再び照らす」より


↑書道フェチすぎてすごいところまでいっちゃってる夕遼のせりふ><

↓第1部は10作品 + 電子書籍オリジナルの短編集2作。
それぞれに異なるテーマがストーリーに絡む。うんちくも豊富で、ほんとうにすごいシリーズです。

『後宮詞華伝 笑わぬ花嫁の筆は謎を語りき』
『後宮饗華伝 包丁愛づる花嫁の謎多き食譜』
『後宮錦華伝 予言された花嫁は極彩色の謎をほどく』
『後宮陶華伝 首斬り台の花嫁は謎秘めし器を愛す』
『後宮幻華伝 奇奇怪怪なる花嫁は謎めく機巧を踊らす』
『後宮樂華伝 血染めの花嫁は妙なる謎を奏でる』
『後宮刷華伝 ひもとく花嫁は依依恋恋たる謎を梓に鏤む』
『後宮麗華伝 毒殺しの花嫁の謎咲き初める箱庭』
『後宮瑞華伝 戦戦恐恐たる花嫁の謎まとう吉祥文様』
『後宮剣華伝 烙印の花嫁は禁城に蠢く謎を断つ』

『紅き断章 すべて華の如し』
『白き断章 すべて雪の如し』


後宮香妃物語



主人公の凜莉は、さまざまな効用をもつ”香り”を調合する「香士」。
亡き父が完成させたはずの「秘宝香」を調合するため、凜莉は皇太子のため新たにつくられた後宮でひそかに研究をはじめます。

皇太子との恋の行方はもちろんなのですが、
主人公の欠けた記憶や、毒香をつかったトリックと意外な黒幕……とミステリ的な部分もおいしい作品。
凜莉があらゆる匂いをかぎわける”絶対嗅覚”という特技を持っていて、これが大きな鍵となっていきます(人の感情や病気もかぎわける!)。

ラストはページをめくる手がとまらない。上質な中華ファンタジー。
コミック版↓も出ています。


宮廷恋語り




稜国には、王の妻である”金銀の妃”を試験で選ぶ制度があります。
主人公の翠凛は、故郷の木綿産業を救うべく、金妃を目指して登城します。
身分を隠した太子、謎の女装男子(!?)、美形の武官と異国の王子……などなど、後宮もの定番要素がたっぷり。

あとがきで響咲いつきさんも自認しているとおり、女の子のキャラクターが多く、みんな魅力的。
恋愛物語が好きすぎて妄想がとまらなくなる紅蘭のキャラがいいねv
同室の少女たちとかしましく選考にそなえる様子は、以前の記事(【記紀神話後宮が舞台の小説10冊)で紹介した『後宮小説』を想い出します。
王道の中華風宮廷ファンタジー。↑全2巻なのでセットでどうぞ♪

後宮の錬金術妃



良家の娘・白連は、新皇帝の妃のひとりに選ばれ、後宮へ……。
オーソドックスな中華風後宮ファンタジーかと思いきや、主人公の”目的”が異色なのが本作。

白連は侍女として連れてきた妹を、皇帝とくっつけようとします。
妹の木蘭は異母妹で、実家ではとてもしいたげられてきました。
身をひいたり、ときには嫌われるようふるまいながら、木蘭を守る主人公がカッコよすぎます。

自分が幸せになるのではなく、妹を幸せにしようとする物語。
サスペンスが効いていて、どんでん返しからのエンディングはとても素敵。
面白くてオススメなライトノベルですv

↓コミカライズもされています。


覇帝激愛



ラストはこんなのもあるよ〜という1冊。
璋紀(しょうき)帝は狩りの最中、天界からきた美しい公子・若蘭(じゃくらん)と出逢う。
その美貌をわがものとすべく、帝は彼を後宮に連れていき、愛妾としてしまう……。

官能小説かつBLです。
ほかの後宮もとのは異なり、時代背景や宮廷の描きこみはあっさり。そのかわり、寝台のなかの描写は濃厚。
刻々と変わる唇や両手の位置さえすべて想像できる、濃い描写は圧巻です。
そばに侍る宦官が加わってくるのは後宮ものならでは。

……と真顔でレビューする私><
ちなみにこの後宮。若蘭以外の妃はすべて女性です。
男性は若蘭だけの純愛(?)もの。

璋紀帝の攻めっぷりに沼る、”激愛”な後宮ボーイズラブをどうぞ///



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あきか(@akika_a

(冒頭の写真は富士白糸の滝で撮った祠です)

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2022年07月31日

紫禁城の歴史がわかる本5冊


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「紫禁城の歴史がわかる本5冊」をまとめました。
取りあげた書籍は……

『紫禁城―清朝の歴史を歩く』
『北京 故宮博物院展』
『蒼穹の昴』
『紫禁城の黄昏』
『わが半生』



順に、

読みやすい新書
博物院となっている現代の紫禁城(故宮)のガイドブック
浅田次郎さんの歴史小説
清朝最後の皇帝の家庭教師・ジョンストンによる手記
清朝最後の皇帝・溥儀の自伝

です。
本とはべつに、溥儀の生涯を描いた映画『ラストエンペラー』も紹介しています。


清の時代がまさに終わろうとしている”黄昏時”。
ジョンストンは、こんな言葉を残しました。

シナには近代欧米的な意味での国家は、かつて存在したことがなく、いろいろな王朝があっただけである。


明から清へ。近代まで中国王朝の歴史を支えた紫禁城。
紅い墻壁と黄色い瑠璃瓦は美しく、数々のドラマや映画の舞台にもなっています。

今なお世界じゅうの人々の惹きつけてやまない、
故宮・紫禁城の魅力を味わいつくす5冊をど〜ぞ♪



紫禁城



かつての紫禁城――故宮博物院を歩きながら、明朝〜清朝の歴史をひもといていく。

大和殿と保和殿のたたずまいに、まだ少年であった康熙帝の即位と親政をしのび。
後宮の改造された西六宮に、西太后の”強運”を見出し。
寧寿宮の九龍壁に、乾隆帝の審美眼をみる……。

”場”と”歴史”が同時に詳しく解説される文章は、歴史ロマンそのもの。
本格的なガイダンスを聴きながら故宮を散策している気分になれる、オススメの良書です。

故宮博物院展



故宮博物院展――倭国でおこなわれた故宮博物院の展示会のガイドブックです。
日中国交正常化10周年記念……と、かなり古い本ですが、内容が濃く、写真も解説も素晴らしい。資料としてオススメです。

前半は、写真をふんだんに掲載し、故宮の様子と歴史を解説。
後半は、「陶磁器」「漆工芸」「玉器」「絵画」「書と文房具」のジャンルに分け、博物院に収められた文物を紹介しています。

希少本ではありませんが、重版はなく、現在手にできるのは中古品のみ。
40周年↓のときにも同様のパンフレットが作成されました。



蒼穹の昴



『蒼穹の昴 2』
『蒼穹の昴 3』
『蒼穹の昴 4』

浅田次郎さんの小説です。
科挙に受かり出世していく梁文秀と、糞拾いから宦官になった同郷の少年・李春雲のふたりを軸に、時代に翻弄される人物たちを描き出しています。
語られるのは清の光緒帝の時代。戊戌の政変(変法)(1898年)の前後まで。

以前の記事(後宮が舞台の小説10冊)で紹介した『テンペスト』とおなじように、懸命に生きる個人が”歴史のうねり”に取りこまれていってしまうのがとても哀れ。
終盤は涙なしには読めない名作です。

歴史小説なので、もちろん実在の人物がたくさん登場します。
光緒帝や西太后をはじめ、康有為、袁世凱、李鴻章……。
清朝の宮廷画家・郎世寧(カスティリオーネ)や倭国の伊藤博文まで、有名な人物がいきいきと動きまわるさまは圧巻。
(梁文秀と李春雲のふたりは架空の人物ですが、実在の梁啓超と小徳張がモデルだともいわれています)

舞台となる紫禁城や、離宮の頤和園の描写も精緻。
タイムスリップして清国をみてきたかのような、すごい小説です。

↓「蒼穹の昴」シリーズとして、新たな作品が続々と上梓されています。
最新の『兵諫』では、西安事件(1936年)までが描かれます。

『珍妃の井戸』
『中原の虹』
『マンチュリアン・リポート』
『天子蒙塵』
『兵諫』

紫禁城の黄昏




清朝が倒れゆくさまをみてきたように……というか、みてきた人が語る。
著者は、最後の皇帝・溥儀の家庭教師、ジョンストンです。

史料ともいえる1冊ですが、訳がよく、読者を引っぱりこむような展開力も素晴らしくて、ぐいぐい読まされてしまう。
人物解説、年表、系図、地図、写真……と掲載資料が豊富で、細部の理解を助けてくれます。

メインは宣統帝・溥儀の時代。でも本書が語りはじめるのは西太后の時代、戊戌の政変から。なので、ちょうどの『蒼穹の昴』続きを読んでいるような感覚になります。
蒼穹→黄昏の順に読むのもオススメ。

皮肉をまじえ、鋭い批評眼で時勢を分析するジョンストン。
ですが、皇帝のことを語る文章は一転して敬愛にあふれています///

中国王朝最後の「黄昏」の時代。
名作映画「ラストエンペラー」とセットでどうぞ♪

ラストエンペラー



というわけで、本5冊とはべつに映画「ラストエンペラー」を紹介。
紫禁城と満州国を舞台に、中・伊・仏・米が共同で製作した歴史映画です。
作曲家や役者として、倭国の坂本龍一教授も参加しています。

幼帝として即位し、実権を失った皇帝として紫禁城で育つ溥儀。
やがて紫禁城を追われ、流されるように満洲国の皇帝となるも、満州国は崩壊。
ソ連軍にとらわれ収容所へ……。

こんな、三行でまとめるだけでも壮絶な、愛新覚羅溥儀の一生が描かれます。
ちなみに皇帝が政権を失った”黄昏時”の紫禁城は「清室優待条件」という決まりごとによって、皇室や使用人たちが生かされている状態。
年金をもらって暮らしている感じです。

形骸化した城でコオロギと遊び、自転車を乗りまわし、宦官とたわむれ、皇后や側室を愛する”少年皇帝”溥儀。
誰よりも当事者なのに、誰よりも蚊帳の外にいて力のない皇帝の描写がなんともいえず切ない。

家庭教師ジョンストンと溥儀の友情や、”第二夫人”であることに葛藤をおぼえていく側室の文繡など、様々なテーマが内包しています。
名作なので、まだ観ていない方はぜひ♪

↑で紹介した『紫禁城の黄昏』も、収容所の取り調べのシーンで登場しています。

わが半生




ラストはその”最後の皇帝”の自伝。著者は宣統帝・愛新覚羅溥儀です。
「ラストエンペラー」の原作本でもあります。

↑で紹介した『紫禁城の黄昏』を歴史評論にたとえるならば、『わが半生』は一人称小説。
復辟を願いながらも周囲の思惑に巻きこまれていく溥儀の、怒りと悲しみが綴られています。
皇帝の視点で歴史の激動を見つめる貴重な1冊。
(下巻の「制作経過」をみると、溥儀以外の手もかなり加わっているようですが)

『黄昏』では描かれなかった、ジョンストンと離れた後の話ももちろんあります。
もうね、『黄昏』とセットで読むと、ふたりの師弟愛にあてられてしまう。

私の目には、ジョンストンのすべてがもっともすばらしく、彼の服の樟脳の香りさえかぐわしく思われるようになったのである。

ジョンストンはすでに私の魂の重要な一部を占めていた。
ともに「第三章 紫禁城内外」より


……樟脳の香り!
同時に読むと、色々とはかどると思います。何が。

いえ、まじめな話。おなじ出来事が表裏で語られていたりするので、復習にもなるし、多視点で史実を味わえて興味ぶかい。
年表など『黄昏』に掲載されている資料は、本書を読むときにも役立ちます。一緒にどうぞ。

情報量がとても多く、皇室や紫禁城の細部など、ほかの本ではみられない内容がたっぷり。
”キャラ読み”もできる名著です。



ノーリスク・ハイリターンの投資は"読書"♪

あきか(@akika_a

(冒頭の写真は川越熊野神社、期間限定の「恋手水」です)

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posted by 姉崎あきか at 00:45| 10冊シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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